タイトルを見て、思いつくことといえばおそらくファミコンの登場であろう。

ファミコンの登場は1983年。今でこそ、スーパーマリオブラザーズのような家庭用オリジナルゲームメインのハードという認識が一般的だが、それ以上に人々を興奮させたのはアーケード作品の移植であった。

ゲームセンターのゲームが家で遊べる、それだけで当時の子供達は興奮したのである。それは、今のゲーム業界にも通ずる普遍的な考えである。といっても、今は多くの家庭用作品とアーケード向け作品は別々の道を歩んでいるが……


さて、ゲーセン離れが言ってしまえば定着した頃に流行っていたアーケード作品がある。それが、ネット麻雀を題材としたコナミの麻雀格闘倶楽部とセガのMJである。ちょうど、ネットが普及し始めた2002年頃に稼働開始し、シリーズを重ねるごとに多くのユーザーを獲得するに至った。全盛期には、この時代には珍しくドリンクの無償提供をする店舗もあったぐらいだ。MJはオリジナルの缶ウーロン茶を提供するくらいである。ドル箱といっても過言ではなかった。(私にとっては募金箱であったが)

麻雀ゲーム自体は脱衣麻雀に代表されるようにゲーセンの華と言ってもよい。しかしながら、規制の波には逆らえず、かろうじて稼働している筐体はあるものの、多くのゲーセンからはほとんど撤去されてしまっている。麻雀離れというものも負の要素としてはあったのかもしれない。そんな中、実際に日本の何処かにいる人間と麻雀が打てるネット麻雀はこういった脱衣麻雀に取って代わるように次々とゲーセンで稼働を開始していった。いくら麻雀離れとはいえ、潜在的な麻雀人気は存在するのだから、当然の結果であろう。

そんなネット麻雀バブルとも言えるこの現象だが、いつまでも続くはずはなかった。

今、多くの家庭には1台はPCがあって、必ずネットに繋がっている。先日、ニコニコ動画において行われた参院選の支持政党アンケートによる当確予測が大手メディアの出口調査以上の精度を誇ったことが話題(http://news.nicovideo.jp/watch/nw699791)となったが、それくらいPCは普及しているのである。つまり、「ネット麻雀を打ちたい。でも、家にパソコンがないからゲーセン行こう」という発想を持つ人は、元々のゲーセン利用者層を考えると皆無なのである。

パソコン向けネット麻雀をメインにやってる多くの人が必ず言う台詞がある。

「どうして、パソコンで無料で出来るのにゲーセンでやるの?」

全くその通りで、結果として少しずつ少しずつアーケード向け麻雀ゲーム利用者は去っていたのである。

一応、これに対して、「画像が綺麗だから」とか「演出が豪華だから」とか「アバターなどのコレクション要素があるから」とか色々な反論もあるが、パソコンの普及だけでなく、パソコンの性能の上昇に伴い、こういった要素をフォローするPC向けネット麻雀が無料でいくらでも存在し、わざわざ1プレイに100円というリスクを選択する人の方が金銭面だけ見れば損するような状態となってしまった。

今、ゲーセンで麻雀コーナーを見ると、そもそも賑わっているゲーセン以外はあんまり人がいない状態となっている。通例であれば、稼働当初は通常価格で続編が出る前辺りから200円3クレジットや100円2クレジットなどのサービス設定にして続編が稼働開始したらまた通常価格に戻る、というのが、これまでのスタンスであったが、例えば、私がよく利用するゲーセンでは、最新作のMJ5が稼働開始直後から200円3クレジットであった。もう1軒たまたま覗いたゲーセンでも同様の設定になっていて、アーケード向け麻雀ゲームの終焉を目の当たりにしたようだった。


それからしばらくたって、麻雀格闘倶楽部を運営するコナミがe-AMUSEMENT CLOUDという(現状では)麻雀格闘倶楽部向けサービスのβテストを開始した。これこそがタイトルにある「ゲーセンから家庭へ」である。

このサービスはゲーセンに行かなくても家でゲーセンで遊ぶのと同じことが出来るいうもの。これまでにも家庭用向けに、いくつも麻雀格闘倶楽部はリリースされてきた。売りであるネット対戦なども完備していたが、それはあくまで、同じ家庭用作品を持っている人同士だけであった。こういった作品は、麻雀ゲームに限らず、ネットが普及した今、数多に存在するが、元々対応ソフトを持っている人は少なく、こういった家庭用ゲームのネット対戦は時が経つにつれて人が少なくなり、いずれネット対戦として成立しなくなるという運命であった。

しかし、e-AMUSEMENT CLOUDは家庭用ではなく、家庭でアーケード作品が遊べるというものである。つまり、対応ソフト所持者限定という縛りがないので、人がいくらでも集まるのである。むしろ、PCユーザだけでなくアーケードユーザも巻き込むので、利用者数は(あくまで理論的にはであるが)ネットゲームで一番多くなる。

また、家庭用の場合、新作が出ればそちらに人が流れ、旧作はある意味、ゴミをなってしまうが、このサービスでは何か特別なソフトを購入しなければならないわけではないので、そういったこともない。まさに、夢のようなサービスなのである。

そして、それは麻雀格闘倶楽部に限った話ではない。つい先日、対抗馬のMJも同様のサービスを開始した。http://sega.jp/topics/130725_3/

今のところ、iPhone/iPad向けのみだが、いずれPC向けにもサービスを開始するようである。元々、アーケードの実績がある両者が今後、PCネット麻雀界にどのように影響してくるのか非常に楽しみである。


その一方で、これまでゲーセンにお金を落としていた人たちが、ゲーセンにではなく販売元の企業に直接お金を落とす形になるという問題点もある。ただでさえ、安定的なインカムを見込めないゲームが多く存在するゲーセンにおいて、プレイ人数が全盛期より少なくなったとはいえある程度の収益を見込めたであろうゲームがPC業界にも進出するというのは今後、ゲーセン側と企業側との間の課題となってくるだろう。そういった面でも今後の動向が非常に気になるサービスである。


__________________________________

 人気ブログランキングへ ←でも天鳳打つんでしょ?って思った人はクリック